何度も出させていただいて、恐縮なのですが、うちの愛犬です。
実は私の家族が入院することになり、その無事を祈って神社にお参りに来ているところです。犬の表情もどことなく心配気です。言葉はわからなくても、家族の様子がいつもと違っているかとを感知しているかのようです。
犬を飼ってらっしゃる方は皆さん感じていると思いますが、犬って不思議とその場の状況を察知しますよね⁈ 私が子供の頃に飼っていた犬は、予防接種に連れて行く時に、いつもと同じ散歩のコースを歩いているのにもかかわらず、なぜ途中で立ち止まってしまって、それ以上歩くのを拒否したものでした。あと犬って、こちらの気分も読みますよねー。こちらが本当に怒っている時などはそれを察知してけして寄ってきません。
そういった犬の不思議な能力を用いて、病気の方の援助を可能にしようという研究が進んでいます。単なるアニマルセラピーによって患者さんの心を癒そうといった方向性でなく、もっと積極的です。なんと「てんかん」の患者さんが発作を起こすのを察知して、それをご本人や周囲に知らしめたり、患者さんが倒れても大丈夫なように周囲の危険物を取り除いたりするそうです。
それにしても、発作の予知をするというのはどういうメカニズムなのでしょう? 当院では脳波検査を積極的に施行しておりますし、私自身てんかんを学んだことはあります。「前兆」と言って、発作の予兆となる身体的な変化があって、それを感じ取れる患者さんはいらっしゃいます。その「前兆」というのは、実は軽い発作でして、その瞬間に脳波検査をすると、脳波異常が出現している可能性はあります。
その「前兆」の持続時間は長くても数十秒という単位です。しかし、てんかん援助犬は、なんと患者さんが発作を起こす何十分も前に、それを察知するそうなのです。超能力?と思ってしまいますが、今のところ、患者さんの表情の変化を犬が敏感に察知するというメカニズムが考えられているそうです。
ただ、必ずしも発作が予知できなかったとしても、発作が起きた時に、周囲に知らせてくれたら、それだけでも安心ですよね!
この分野での先進国であるスウェーデンのてんかん介助犬は、ベストを身につけていて、患者さんが発作を起こすとベストからぶら下がっている紐を引いて、患者さんの家族に発作が起きたことを知らせるというのです! 素晴らしいですよね。
実はてんかん患者さんの発作が起こる場所として最も危険なのは水の中です。例えば浅いバスタブだとしても、入浴中に発作を起こしてしまうと、そのまま水中に沈んでしまうわけです。私はてんかんの方には「一人で泳ぎには行かないでね」とか、「浴槽に浸かる時は、家族に一言、その旨を伝えてね」と必ず言います。そのくらい危険なのです。
しかし、てんかん介助犬は、もちろんその危険性も十分教え込まれているので、なんと患者さんが風呂に入る時は、風呂の前で伏せの姿勢で待機して見守っていてくれるというのです。
とても安心でしょうし、なんだかその様子を思いうかべるだでも微笑ましいですよね。
実は、このてんかん援助犬のことを私に教えてくれたのは心理学専攻の、ある学生さんでした。てんかんについて教えてほしい、とのことでいらしたのですが、その理由は、てんかん援助犬の研究をしたいから、とのことでした。お教えするという立場にいながは、実は私のほうがいろいろと教えてもらったという体験でした。その学生さんが言うには、てんかん援助犬がいれば、てんかんの方の自立を助けるのではとのこです。私もそう思います。
ぜひ、このてんかん援助犬のことを我が国でも多くの方に知っていただき、将来的にはトレーニングセンターも作られて、多くの患者さんが、そのサービスを受けられる日がくると良いですね!