先日、ADHDの勉強会が開催され、参加して来ました。
有名な先生が、ADHDの診断や治療についてわかりやすく講義してくださり、とても有意義でした。こういう会は、講義の後に懇親会も催されるのですが、その席で演者の先生に質問までさせていただけました。
今回の研究会のテーマの一つは、「インチュニブ」という薬についてだったのですが、そのメカニズムが今ひとつ理解できなかったからです。
ADHDに対する治療薬で現在使用できる薬は他にはコンサータやストラテラがあります。それらのメカニズムは理解が容易です。ごく簡単に言えばコンサータは脳内のドーパミンを増やし、ストラテラはノルアドレナリンを増やします。その作用によってADHDを良くしようという薬などわけです。
しかしインチュニブは違います。他の医師の方が書かれた一般向けの文章を読んでみると、「インチュニブは、α2Aアドレナリン受容体を刺激するすることによって症状を改善します」とのことです。でもこれって「なんのこっちゃ?」と思いませんか? 一般の方はまず理解が困難でしょうし、私程度の、薬理学は専門でない医者が読んでも、「その受容体は、そもそもどこにあるの? ノルアドレナリン神経系の神経細胞にあるの?」と考えてしまいます。
なぜかこれまで、インチュニブを発売している会社もあまり強調してきませんでしたが、そのα2Aアドレナリン受容体というのは、実はグルタミン酸神経系の神経細胞にあるらしいのです。
これ以上は話が複雑になってしまうので深掘りはしませんか、どうもインチュニブは、脳内のグルタミン酸の量をうまく調整することによってADHDを良くしよう、というメカニズムのようです。これは結構画期的なことです。これまで多くの医者はADHDは脳内のドーパミンとノルアドレナリンのみが関与している病気だと認識していましたから。
最近では、少数ながら、ADHDの方の脳内のグルタミン酸を調整する他の薬によって良くしようという研究も行われているようです。今後の研究や開発が待たれます。